本読むヒトデ

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片岡球子の贋作とサイン本について

こんばんは。美術展の図録を集めている古書店・HITODE BOOKS(ヒトデブックス)です。片岡球子展の図録も販売中です。

「生誕一一〇年 片岡珠子展」図録

「生誕一一〇年 片岡珠子展」図録

 10月22日(火)のテレ東「開運!なんでも鑑定団」で片岡球子作品が紹介されました。依頼人はもともと片岡球子が好きで、骨董市でたまたま見つけたその「珠子作品」に運命を感じ、ATMに走り50万円を下ろして来てその場で買ったという話でした。番組恒例の「本人評価額」は大きな声で「本物と信じて500万円!」と発表。絵が好き、好みの絵を集めるのも好き!という感じの明るい女性でした。

 

鑑定の結果その絵はニセモノであるとされ、評価額は1000円でした。なんという事…。でも、評価額が発表される前に流れたVTR(片岡球子の生涯や作品の解説)の途中からその気配濃厚でした。当店の在庫やVTRで見た珠子作品は、構図は無邪気、大胆であっても、細部は丁寧に細やかに描き込まれており、千代紙や古裂のコラージュのようです。対して依頼品はそういう繊細さに欠ける印象で…。

 

片岡球子「富士」

片岡球子「富士」

 そこで疑問。あの女性に50万円で絵を売った古物商はどういう売り方をしたのでしょうか。そんな話は出なかった気がするし、出ていたなら聞き逃しました。ともかく、絵のド素人である当店でも違和感を持ったものを本物と思っていたのなら、絵画を扱うお店としておめめが節穴も良いところ。贋作と分かっていたなら50万円で売るのは悪質。一番ありそうなのは「片岡球子かもしれないけど違うかもしれない」というような売り方。それなら問題ない気もしますが、依頼品は8号前後に見えたので、号単価(という言葉はないかもしれませんが)6万円強の値付けはずいぶん強気では。そして女性もよく買ったなぁと。一目惚れの力はすごい、という事でしょうか。

 

しかし、よそのお店の事をああだこうだ言っている場合でもないのです。当店の在庫にはいわゆる「サイン本」があります。サイン本を入荷する度、この真贋は分からんなぁと少し途方にくれます。自分自身がファンとしてサインをもらった事のある作家ならともかく、よく知らない著者のサインはそれ単体では真贋の判断がつきません。更に、控えめな著者なのか「持ち主の記名」のように楷書ですみっこに書かれているようなのもたまにあって、そうなるともう…。もし人に「これはあなたが著者のふりをして書き込んだものではないのか」と聞かれたら、そうではないと証明するのはまず無理。悩ましい事です。とりあえずは、サインがあるからと値段をつり上げているわけでもないし、まあ問題ないかな、という結論を出していますが。