本読むヒトデ

古書店・HITODE BOOKS(ヒトデブックス)の商品や業務などをご紹介します

みちのくの豆本

HITODE BOOKS(ヒトデブックス)はウェブ上で古本を販売する、小さな古書店です。2017年に古物商免許を取得して以来、2年が経ちました。古書の買付けは日々、発見の連続です。一冊一冊に、時代の空気が詰まっていて飽きることがありません。

 

ブログ「本読むヒトデ」では、ウェブ古書店を運営するなかで感じたこと・発見したことなどを中心にご紹介していきます。第一回目は「みちのく豆本」のお話です。

 

みちのくの豆本

山形県酒田市を拠点とした「みちのく豆本の会」が1957年から38年間、延べ130冊(他、別冊もあったようです)の豆本を発行しました。主宰は、酒田市立図書館の館長も務めた佐藤公太郎さん。館長時代に「酒田市史」を編纂した際、紙幅の都合で惜しくも掲載することができなかった数々の資料を前に、豆本作りのアイデアを閃きます。

 

本作りの主題は「みちのくの地域文化」で、一部の例外こそあっても最後までそれは貫かれました。創刊当初は約300人だった会員は最終的には約1000名にまで達し、装丁も手掛けた佐藤十弥さんによる「洗練され垢抜け」した包み紙と封筒とともに、配本されていたようです。郵送にあたっては必ず記念切手が使われていたといい、こうなるとその造作も見てみたくなります。

 

最終号『終艸集』(しゅうそうしゅう)によれば、日本の豆本文化の流れは江戸時代に始まります。

 

  • 江戸時代:「百人一首」を筆頭に「古今集」や「狂歌集」など
  • 明治時代:「かちかち山」などの民話や「水戸黄門」などの講談もの
  • 大正時代:豆辞典や豆小唄集なども登場し、多種多様な内容に広がる

 

そして昭和期には全国88ヵ所から豆本が刊行され、昭和50年頃の推計で豆本愛好家は約3~4000人いたということです。

 

青森にはもうひとつ、旺盛に豆本出版を続けた「緑の笛豆本の会」があって、「みちのく豆本」の終刊時点で316冊、最終的には423冊を発行しました。東北地方は、祭りや芸能の宝庫といわれると聞きます。本に記録したいと思わせる数多くの地域文化あったのかと想像すると、豆本をはじめとする地方出版物への興味もさらに高まります。